関西小劇場を楽しもう 6

小旅行気分、潮風に吹かれての芝居はいかが!?

ようやく涼しく爽やかな風が肌に心地よい季節となりました。異常なくらい暑 い夏でしたが、みなさん元気でお過ごしでしたでしょうか。こんな気持ちいい シーズンは、ぜひ野外をエンジョイしましょう。音楽ライブは、真夏が旬です が、演劇は秋なんです。大阪は、海からの風に吹かれて、スペクタクルなト リップを体験できる「大阪野外演劇フェスティバル」に出かけてみませんか。

何でも野外で公演する劇団がいくつもそろっているのは、大阪だけらしいんで すが、ちゃんと横の連絡網があるのも人情豊かな関西の土壌感じさせてほほえ ましく思います。その中でも絶対のお奨めは「維新派」と「犯罪友の会」。二 つとも劇団名聞くだけであやしいですが、歴史と実力はピカイチ。実際、維新 派はかつて日本維新派と名のっていた時代もあって、そのスジに間違われたこ ともたびたびとか。


維新派「水街」
大阪南港ふれあい港館広場野外特設劇場
10/22(金)〜11/9(火) 7:30
(当初8日までの予定が、好評のため延長)

犯罪友の会「ひだまりの海」
弁天埠頭船上特設劇場
10/26(火)〜31(日) 7:30
どちらもたぶん、初めて観る人は今までの演劇の概念くつがえされること必定 のステージでしょう。来春には世界的な海外公演に招待されている維新派は、 これがそのお披露目初演になりますが、劇場そのものから組み立ててしまう姿 勢が他と一線を画します。舞台だけでも、昨年公演の例だと、資材10トント ラック20台分、丸太3000本、奥行35mの舞台中央に直径15mの回転 装置(人力で動かす)を設えるという大掛かりなもの。役者は、ざっと50人、 装置動かしたりのスタッフが同じく50人という大所帯が、公演前から2ヶ月 泊まりこみで野外劇場組み立てるとか。ふだんは建築現場で働くツワモノもい て、本職はだしの仕事ぶりには目を見晴らされます。

その人的空間的なスケールのすごさのみならず、美術、文学、音楽まで取り込 んだパフォーマンスが作り出す豊穣なイメージは、他に比類がありません。ケ チャのリズムにも似た日本語ラップの心地良さに酔い、煩雑に出し入れされる 祭りの山車のような装置に目を見張り、登場する幾多の少年少女たちに懐かし さを覚えるに違いありません。開発中の南港ネオ都会の明かりを背景に夜空が 広がる中、不思議な時間を今自分が漂っていることに気がつくかもしれませ ん。

今年は、大量の水を使って水街・大阪を描くそうですが、降り注ぐ水や吹き上 げる蒸気、大量に舞う紙ふぶきに照明が映えて、詩情と力技みなぎる空間にな ることでしょう。劇場周辺には、いつも屋台(スナックやアルコール類、雑貨 を売ったり、アピールあったり)が出て東南アジアの市場の一角に迷い込んだ よう。一度訪れれば、維新派は「観る」ものではなく「体験」するものだとの 評判が納得できるでしょう。この季節になると、遠方から多くのリピーターが 南港を目指し、巡礼者のように毎年訪れるのもうなづけるのです。

場所は、ATCやWTCのあるコスモスクエアの一角。ふれあい港館(ワイン ミュージアム)に隣接の普段は駐車場になっているところです。夜は、思いが けず冷えることもありますので、防寒の用意はぜひ。毎年、千秋楽に近くなる ほど込み合い、前半の平日が比較的ゆっくり観れるようです。

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犯罪友の会は、船を改造、舞台にしつらえての海上ステージ。前回公演「海と 椿」では、観客は岸壁からタラップ伝って乗船して観劇する段取りでした。ク レーンを使ったり、役者が海に飛び込んで別の船にまで泳いで行ったり、意表 つくスペクタクルな展開にあ然としたものです。話は、いたってシンプルわか りやすい内容で、普通の劇場ならご法度のタバコどころか車座になって酒料理 の宴会しつつ観劇しているグループまでいて(いいのかしらん?)、さながら昔 の芝居小屋の雰囲気。これは、もう身体張ってそこまでやるかの芸人根性が見 せどころでしょう。役者馬鹿(誉めてます!)って言うんでしょうか、とことん 楽しませてくれるその姿勢には頭下がる思いがします。

場所は、JR地下鉄弁天町から北へ歩いて15分ほど。天保山の賑わいに比 し、今はさびれてしまった弁天埠頭のたたずまいに一抹の淋しさを感じます。 が、いつまでも熱い芝居魂持ち続ける彼らに、きっと元気づけられるはずで す。

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