学会について

 とにかくスケールがでかいという表現が一番適当でしょう。会場はサンフランシスコ市が建設したMoscone Convention Centerでありました。この会場は日本で言うと南港のインテックス大阪のような建物です。場所はダウンタウンの間近にあり、徒歩で行ける距離のところです。

 学会会場に入ってまずやることはレジストレーションです。受付は日本の学会とほぼ同じです。私は日本から要旨集引換券を忘れていったので少々受け取りに手間取りましたが、参加証を提示したらもらうことができました。アメリカは現在景気がよく、スポンサーが要旨集と一緒にショルダーバッグを渡していました。学会参加者の大半がそのバッグを使っており、一目で学会関係者であることがわかります。出席している人がすごくラフな格好だった、というのも印象に残っています。乳母車で赤ちゃんを連れている女の人がおり、日本の学会と違う雰囲気でした。     

       

ポスター発表会場                         企業展示会場

 

 この学会が日本分子生物学学会とほぼ同時期に行われることもあって、日本人の参加者は少なめです。以前はアメリカ各都市を循環して行われていたこの学会は、ここ数年、サンフランシスコとワシントンDCの交互で開催されるようになっています。この学会は細胞生物学全体の網羅的な学会であり、4日間、4,000を越すポスターと大小さまざまなシンポジウムと企業の展示からなっています。この形式も今ではすっかり日本の学会で定着してきており、現在では見慣れたスタイルとなっています。しかし、企業の展示は日本の分子生物学会で行われているものの3倍はあろうかという勢いでです。展示を見て回るだけでも1日ではとうていすみません。

 日本の学会に無いスタイルとして、要旨集に間に合わなかったものを発表する"Late Poster Section"というのがあります。これは発表が最終日であることや会場の隅でポスターが展示されているので、あまり目にとまりにくいが、今回数少ない植物分野での発表があり、自分の仕事と近いものもあったので興味深く聞かせていただきました。その発表者に論文の請求をすると帰国後1週間くらいで送られてきました。

 自分自身の発表は最終日で発表分野が良くなかったせいか、あまり客は来ませんでしたが(笑)、10人弱聞きに来てくださいました。発表していて感じたのは、やはりネイティブの人を相手に英語を話すのはかなり修行を積まなければならないということでした(あたりまえですが・・・)。また、仕事の内容でもかなり完成度の高いものを発表しないと客の足は止まりません。私のやっている仕事はまだ発展途上の技術であり、企業展示にも数社同じような出展があり、ライバル意識を燃やしました。

       

増村先生 発表の様子                         筆者 発表の様子

 

 今回の学会で目に付いた発表はGFPを用いた解析法です。一時的に強いレーザー光を当てて細胞内の特定領域のGFP融合分子のみを蛍光を消失させ、その領域への外からのGFP融合分子の流入を解析するという方法です。この方法を用いることにより小胞体内での特定領域への新生分子の集合機構を解明する大きな手段であることが示されていました。一般のポスター発表でもポスターと同時にノートパソコンを持ち込み、実験データ(主にGFPのリアルタイムの挙動)をビデオで公開していた人がたくさんいました。

 ASCBに参加しての全体的な印象でありますが、ここ最近の学会発表は論文にしてから発表するという形式が定着しつつあるのではないかということです。私自身も「この仕事は論文になっているのか?」という質問をよくされました。故に学会発表というよりも論文発表という場になりつつある感じがしました。本当に貴重な情報を集めるためにはポスターの前ではかなり難しくなってきているような気がしました。