Beyond antimicrobials -

the future of gut microbiology

3rd joint symposium organized by the INRA and RRI

12-15 June 2002, Aberdeen, Scotland

 

京都府立大学大学院農学研究科博士後期課程生物機能学専攻 井上 亮


20026月に開催されたRRI-INRA 3rd joint symposium Beyond antimicrobials ...の参加にあたり京都府立大学同窓会より奨学金をいただきました。ありがとうございました。この学会には当研究室から牛田先生、大橋さん(現D3)、私(現D2)の3名が参加し開催時に大橋さんが同窓会より奨学金をうけ、翌年(2003年)4月に追加採用で私が奨学金をいただきました。同じ研究室でも同時には無理ですが予算が余っていれば追加で奨学金をうけることが可能ですので同じ研究室で申請を考えている人が2人でも申請を試みることをおすすめします。


学会について

学会や開催都市アバディーンについては既にUPされている第6回参加者の大橋さんのページに詳しく書かかれていますので簡単に書かせていただきます。

開催場所はスコットランド第3の都市アバディーンのThe Aberdeen Exhibition and Conference Center、ちなみにINRAInstitut National de la Recherche AgronomiqueRRIRowett Research Instituteの略です。

The Aberdeen Exhibition and Conference Center

 

反芻動物のルーメンや単胃動物の大腸に棲息する微生物の研究に関する学会です。といってもその多くは大腸微生物に関する研究報告であり、ルーメン微生物に関する研究は少なかったように感じました。大橋さんのページでも牛田先生談として書かれていますがルーメン微生物研究者が徐々に大腸微生物の研究に移行しているようです。

大腸微生物叢研究は大腸の粘膜免疫システムが解明されるに従い宿主免疫と大腸微生物との関わり合いという点で昨今ますます注目を集めだしている研究分野といえるのではないでしょうか。テレビ番組などでもヨーグルト(乳酸菌)を摂取すると花粉症(アレルギー)が軽減されるなどと特集されるのを最近よく目にするようになったことからも注目の高さが伺われます。

ルーメン微生物や大腸微生物、プロバイオティクス(ヨーグルトに含まれる乳酸菌等)についてはこちらのHPを参照してください。→動物の消化管


発表内容

Factors affecting intestinal flora construction in infant rat

R. Inoue, K.Ushida

Kyoto Prefectural University, Shimogamo, Kyoto 606-8522, Japan

 

Abstract

We investigated the factors affecting the intestinal flora construction in pups. Three pregnant Wistar rats being bred under barrier units were purchased. They were housed under non-barrier circumstances in our animal facility and fed on a standard pelleted diet. The littermates were not separated until weaning (day 20). After weaning, pups from one dam were offered the same diet as their mother. Pups from the second dam were divided in two groups at day 20. One group received the same-pelleted diet and the other received fructooligosaccharide (FOS)-supplemented diet. Three pups within a litter of third dam were orally inoculated Bifidobacterium animalis at day 18. Faecal bacteria were analyzed by ARDRA and TGGE for all animals at days indicated below. An additional experiment was done with one SPF SD pregnant rat to evaluate influence of microbial circumstances on the adult. At day 18, the flora constitution of pups was simple and primarily constructed by E.coli. At day 40, it became complex and anaerobic bacteria constructed it in large part. The bacterial OTUs detected (approx. 30) in dams were all detected in their pups. However, 25 to 30 OTUs were newly detected in pups. The SPF rat had a far simple intestinal flora and the number of OTU was not increased during experiment. The commercially available conventional rats have simple intestinal flora and their flora constitution, once established, might not be influenced by the microbial circumstances. Pups received bacteria from the environment during day 18 to 22. Dietary FOS influenced strongly the development of intestinal flora during this period. B.animalis transmitted to the littermates after inoculation, but two pups were not colonized. Involvement of the immune response will be discussed.

 

我々の大腸に棲息する細菌叢、その形成過程で細菌叢の構成に影響を与える因子に関する研究です。腸内細菌叢を構成する細菌は主に母親から移行すると考えられていましたが我々の研究で生育環境中や摂取飼料中からも多数の細菌が腸内に移入し腸内細菌叢を構成する細菌となることが示されました。また、環境や飼料中から細菌が移入しやすい時期があることもわかり、その時期にBifidobacteriumをラットに投与すると成熟後も定着し続けることがわかりました。また、離乳直後に摂取する飼料の栄養成分も腸内細菌叢の構成に大きく影響するようです。

ラットにおいては母親にいない細菌が生育環境中から仔に伝播し母親より多様化した細菌叢を形成するというメカニズムが成り立っているように思えます。しかし、これはコンベンショナル、つまり普通の環境で飼育した場合のことでとてもきれいな環境であるSPF環境で飼育されたラットに関しては環境中からの細菌の移入がないので多様化しないと考えられます。昨今しきりにいわれている衛生面の向上がアレルギーを増加させたという考えは生育環境中からの細菌の伝播が減少し腸内細菌叢が単純化した、または複雑化しないためだと言い換えることができるかもしれません。

 

スイスの方から質問を受けました。ラットの腸内細菌叢はいつ成熟するのか?というものでした。

ちなみに生後30日目くらいでラットの腸内細菌叢は成獣と同じような構成になります。


学会終了後ロンドンに2日間ほど立ち寄りました。ビックベンやバッキンガム宮殿など美しい建物を見て回りました。大英博物館がストライキ中で見ることができなかったことが唯一の心残りです。

ビックベン


研究内容

私は腸内細菌叢の形成、腸内細菌の垂直、水平伝播などの研究を行っています。垂直伝播とは自身の母親から腸内細菌が伝播することで、水平伝播とは生育環境中や食事中から細菌が伝播することです。ヒトモデルとしてラットやマウスなどを使って研究を行っています。以前はブタも扱っていましたが最近ではラットやマウスが主体になっています。後々は宿主免疫機構の発達と腸内細菌叢形成との関係を明らかにしたいと考えています。

 

 

私たちの研究室についてはこちらのHPを参照してください

京都府立大学院 動物機能学研究室HP

 

私へのメールはこちらまで