2002.6.12〜15にアバディーン(スコットランド)にて国際学会があり参加いたしました。参加に当たり、京都府立大学同窓会より多額の奨学金を頂きました。ありがとうございました。その学会について報告させていただきます。
会場となったアバディーンは、スコットランドにあります。アバディーンは緯度が高いため、日本よりも涼しく、湿気も少なく過ごしやすい気候でした。時差は+8時間。さらに、日が長く、22時頃までは明るく、夜明けも早いです。時差ボケで、慣れるのに大変でした。アバディーン空港とホテルの周りには野ウサギがたくさんいました。のどかなところです。この学会には、府立大学から私と牛田先生、井上くんの3名で参加しました。
この学会は反芻動物のルーメン(反芻胃)や単胃動物の大腸に棲息する微生物の研究に関する学会です。これら微生物叢の研究としては、ルーメン微生物の方が遙かに先に進んでいました。というのも、畜産業において反芻動物は重要な位置にあり、ルーメン微生物による発酵が反芻動物の飼養に重要であるからです。しかし、ご存じの通り、ヒトをはじめとする単胃動物の大腸にも腸内細菌が棲息し、宿主の健康と密接な関係にあるということがわかってきています。そのためか、ルーメン微生物の研究者も段々大腸の腸内細菌の研究に移行してきているようでした(牛田先生談)。
今回の学会において、発表された腸内細菌の研究は大きく三つに分けることができました。
一つは分子生物学的手法を用いた腸内細菌叢の研究です。近年では分子生物学的手法による腸内細菌叢の解析が主流になってきており、これに関する発表がいくつかみうけられました。しかしながら、腸内細菌叢全体を解析しすることはまだまだ難しいようです。
二つ目は、乳酸菌などのプロバイオティクスやオリゴ糖などのプレバイオティクスに関する研究。この分野は以前より多くの研究がされており、この分野における日本の研究レベルは高い方だと思われます。多くはヒトを対象として研究されている物ですが、家畜の飼養管理においてプロバイオティクスやプレバイオティクスの利用するといったことも注目されています。
三つ目は薬剤耐性の遺伝子に関する研究です。抗生物質の汎用による薬剤耐性菌の出現が問題になっています。この耐性遺伝子は細菌間で伝播することがあり、このメカニズムの解明に関する研究が発表されていました。
腸内細菌に関してはまだまだ未解明な部分が多く残されています。これからもこの分野における研究は数多くおこなわれていくと思います。
学会最終日にはアバディーン市街に足を運びました。市街地には写真のような建物がたくさん建っていました。郊外より人がたくさん集まっていますが、日本の繁華街ほど人は多くありません。さらに、日本人観光客もほとんどいません。(下段写真は牛田先生撮影)
乳酸菌をはじめとするプロバイオティクスには多くの保健効果があることが広く知られています。プロバイオティックバクテリアが機能する部位に多く到達することにより、その効果も大きくなることが期待できます。しかし、消化管における生きたバクテリアの移動については未だ明らかではありません。この研究ではLactobacillus caseiシロタ株(LCS)が含まれている市販乳酸菌飲料をブタに与え、盲腸におけるLCSの移動について、盲腸内のLCS生菌数と移動マーカー濃度を測定することにより検討しました。その結果、LCSが飼料の液相成分と共に移動していることが示されました。
私たちの研究室では腸内細菌の研究をしております。今までは家畜動物を中心に研究を行ってきましたが、現在ではヒトを対象としても研究をしています。
私の主な研究は、乳酸菌(プロバイオティクス)を主体とした研究(宿主への生理機能効果、腸内細菌叢、腸内発酵への影響など)と、硫化水素を生成する硫酸還元菌を主体とした研究(宿主への生理機能効果、腸内細菌叢、腸内発酵への影響など)を中心に研究をおこなっています。