学会で用いたポスター
目的
ゴーダチーズ熟成におけるペプチドの量的および構造の変化を明らかにする。
方法
市販用のゴーダチーズ製造工程より、熟成前、2ヶ月、8ヶ月熟成したサンプルを採取し、使用した。各サンプル10gを50mLの75%エタノールで抽出し、その上清をHPLCにより分画後、分析した。
結果
熟成したチーズは非熟成チーズと比べてアミノ酸が3倍量になり、遊離のピログルタミン酸が8.8μmol/g程度生成された。また、チーズ中のアミノ酸、ペプチドは熟成により親水性を増すことが明らかになった。高分子ペプチドにおいては熟成中の変化はあまりみられなかったが、低分子ペプチドにおいては構造の変化がみられた。熟成前では、αS1カゼインの1番目から40番目、80番目から126番目、βカゼインに特異的に由来したが、熟成後は起源がαS1カゼインの1番目から14番目、80番目から110番目、βカゼインに制限された。
考察
・熟成中の疎水性アミノ酸、疎水性ペプチドの減少はチーズの苦味の低下、風味の改善に関与している。
・非熟成チーズの主なペプチドはαS1カゼインの1番目から14番目に由来しており、これらのペプチドはプロテアーゼによる加水分解酵素に耐えたため、熟成後に存在した。
・熟成前には存在するが、熟成後に消失するペプチドは乳酸菌によって加水分解されアミノ酸になったか、微生物に利用された。
・一方、熟成後に生じるαS1カゼインの80番目から104番目、βカゼインの29番目から28番目に由来するペプチドが何かカギとなるため今後調べていく必要がある。