関西小劇場を楽しもう 5

京都を楽しむ
皆様は、大学を卒業されてから、京都にどれだけかかわっておられるでしょう か。ずっと京都にお住まいの方もいらっしゃいましょうし、すっかり縁遠く なってしまったという方もおられるでしょう。私も、足を伸ばさなくなって久 しかったのですが、近頃はよく京都の小劇場に足を向けます。懐かしい風景や 思いがけない街並みの変化に出会うのも楽しみのひとつです。

府大近くに、かつて烏丸車庫と呼ばれた市電の車庫がありました。地下鉄が整 備され北大路駅となった今は、ビブレをキーテナントとする商業施設に生まれ 変わっています。その北側部分に京都市北文化会館というモダンなホールが併 設され、さまざまな催しが企画されています。おりしも、芸術祭典・京で演 劇、造形を中心としたイベントが、これから一ヶ月にわたって繰り広げられよ うとしていますが、演劇部門の目玉といえるのが、この京都市北文化会館で行 われる二つの公演です。

「夏の砂の上」
5/14(金)-22(日)

いまや京都演劇を代表する松田正隆が脚本、現代演劇の若き巨匠・平田オリザ が演出という最強コンビの二作目に期待はいやがうえにも高まります。97年に 上演された「月の岬」を、私は文句なしにその年のベストワンだと思いまし た。彼らは、人間に隠された心理の襞をえぐりだすかの職人技で、珠玉の静謐 な舞台を見せてくれます。本作も、すでに東京で昨年公開され、読売文学賞戯 曲・シナリオ賞を受賞していますが、今回は待望の関西初お目見え。いっそう まとまりの出る出演者のアンサンブルに、息を呑むことは間違いありません。 これからは、京都も緑風が薫るいい季節、葵祭りをはじめ観光行事も目白押 し、ぜひ北大路にもお運びください。

ダムタイプ「OR」
5/27(木)-30(日)

京都市芸大系の映像・パフォーマンス・現代音楽の集団であるダムタイプは、 あるいは日本より海外での評価の方が高いかもしれません。衝撃としか言いよ うのない緊密な総合モダンアートは、魂を震わすかに次々とイメージを打ち出 します。ストロボがハレーションする中、シルエットとなって動くパフォー マーの身体とストレッチャー。それは現代のミシンと解剖台の出会いかもしれ ません。

以上の、二つの公演の詳しい日程と問い合わせは事務局へどうぞ。                    075-723-7719
チケットは、チケットぴあで発売中です。06-6363-9999

アトリエ劇研

現代演劇において注目すべき渦の中心のひとつとみなされている京都の演劇界 ですが、それをインキュベートしてきたのが今はアトリエ劇研と改名された アートスペース無門館です。府大とも近い下鴨東本町のバス停を北へすぐの いっけん普通の民家が、実は劇場(案内の表示が出ていますので、初めての方 でもすぐわかります)。住宅街にある静かな環境は、劇場内に入っても変わる ことなく、ほっと安らげる空間になっています。「月の岬」やダムタイプも、 ここから育っていきました。そのアトリエ劇研を体験するのに、おすすめの公 演が、下のふたつです。


夏目組「薄暮」
5/28(金)-30(日) 劇団 075-958-4602

三角フラスコ「黄色い花」
6/24(木)-27(日) 劇団 075-525-1940

夏目組は作・演出の夏目雅也が主宰するもの静かでアート感覚な世界。三角フ ラスコは女性三人の劇団員が等身大で繰り広げるおかしくもしみじみなストー リー(今回、客演に男優が入ります)。どちらも、明日の関西をしょって立つ 気鋭の劇団です。京都探検のひとつにアトリエ劇研を加えるプランはいかがで しょうか。

もうひとつ、公演案内をお知らせしましょう。われらが府大系の下鴨劇場で す。大学会館内で、新入生歓迎をかねての公演ですので、母校を再訪するいい 機会ではないでしょうか。

下鴨雁字搦(がんじがらめ)劇場
「ある日、ぼくらは夢の中で出会う」
作・高橋いさを、演出・ナカジマショーコ
5/14(金)18:30、15(土)13:30、18:30、16(日)13:30
京都府立大学大学会館2F多目的ホール
前売¥300、当日¥500、新入生は無料
問い合わせ090-8520-4504(藤田)


虚構と現実がめまぐるしく入れ替わるメタシアターを得意とする劇団ショーマ の傑作を、劇団独自に演出して見せます。スピーディでエンタテイメントあふ れる作品は、どなたも安心して観劇できるでしょう。

                    miyabi.nishio@nifty.ne.jp

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